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理研外研究員(共同研究員):阿部 邦美 ダウンロードへ 論文リスト>>

研究の概要

 理工学のあらゆる分野における現象を解明しようとするときに、多くの場合、最終的に大規模疎行列(次元が大きく、成分の多くは0である)を係数にもつ線形方程式Ax=bが現れる。この方程式は、有限桁演算を行なうコンピュータにより近似解を求める以外に実際的手段はなく、近似数値解法が必要不可欠となる。私が行なっている研究は、この大規模線形方程式を高速に解くための反復型数値解法についてである。

 テーマの第一は、既存より高速、または丸め誤差に強固な解法を開発することである。なぜならば、計算理工学の広範な分野では、現れた線形方程式の数値解をできるだけ効率よく、しかもできるだけ高速にうることが、より緻密に大規模な現象を解明するために重要となるからである。反復解法を用いるとき、多くの場合、前処理と呼ばれる技法が併用される。前処理とは、予め数学的同値性が保たれるような変換を行ない、より効率的に解けるようにする方法で、大幅に反復回数が改善されることが知られている。したがって、解法の収束性を高め、計算時間を短縮するためには、良い前処理法を開発することが重要である。
 従来の前処理法では、各反復において、つねに同一の前処理が適用される。そのため、各反復において適切な前処理が施されていない可能性があり、十分な収束性が得られないことや計算時間の短縮が望めないことがあった。そこで、従来より良い前処理を開発するために、各反復で前処理が異なり、適応的に実行されるような方法を提案した。提案した方法は各反復で異なった前処理が適用できるため、収束性の改善、及び計算時間短縮に関して大きな効果が期待できる。数値実験では、従来の方法を用いたときに収束しなかった問題に対して顕著な効果があった。

 第二のテーマは、並列化によって高速化を行なうことである。提案した前処理では解法を組み合わせるため、並列化効率は単独で使用する場合と異なる。そこで、解法の組合せ、収束性、組み合わせた解法間での計算時間の割合、解法に適用することができる並列化手法などを考慮し、提案する前処理の性能を充分引き出すために最も相応しい条件を検討しなければならない。
 提案した前処理は、前処理付きKrylov 空間法のアルゴリズムで現われるK_1rk を計算する代わりに各反復でA_1rk の近似を求める(以下、内部反復と呼ぶ)ことによって実行される。ここでKは前処理行列、rはアルゴリズム中に現れるベクトルである。この内部反復には任意の反復解法(定常反復法、Krylov 空間法)を組み合わせることができる。SOR 法や前処理付きKrylov 空間法を使用するとき前処理の効果は高く、所要反復回数は大幅に減少すると予想される。その反面、並列化が難しい上に、ベクトル化が妨げられて計算時間の面で効率的ではないこともある。一方、Gauss-Seidel 法や前処理をしないKrylov 空間法を使用するとベクトル化によって計算時間を短縮することができる。しかしながら、前処理の効果は低く、所要反復回数の減少が望めない上に収束しないことさえもある。そこで、Fujitsu VPP700E(分散メモリ型)を使用し、ベクトル化率、計算時間、収束性、解法の組み合わせの観点から、提案する前処理の効率的な使用法を明らかにした。

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