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協力研究員(理研所属):貝原 真 ダウンロードへ

研究の概要

静脈血栓症発現機構に関する実験シミュレーション研究

 血流停滞に近い状態での血液凝固、血栓形成をin vitro で調べるために開発したレオロジー計測システムによる測定・解析および生化学的分析から、赤血球膜による凝固第IX因子の活性化がトリガーとなって起こる血液凝固反応が存在することを明らかにしてきた。本研究は、この血液凝固反応機構の体系化を目指すとともに、in vitro シミュレーション実験により静脈血栓症病態発現との関連を明らかにし、静脈血栓症の予防や診断への応用を目指した基礎的、応用的研究を行うことを目的とする。
本プロジェクトで行った研究の概要は、

(1) 赤血球膜表面に存在すると予想される第IX因子活性化酵素の抽出と同定[1],[2]
第IX因子活性化酵素のアミノ酸配列を調べた結果、白血球に存在するエラスターゼに類似の酵素であることがわかった。本酵素の第IX因子活性化能は、通常の凝固反応での活性化能の約1/10であった。
(2) ヒト血液の凝固過程のレオロジー測定および解析
正常者および各種疾患者69名について、血液凝固過程の血液の流動性の変化を減衰
振動型レオメータにより測定し、凝固反応のタイプの分類を行った。その結果、赤血球がによる第IX因子の活性化がトリガーとなって凝固が開始するのは全体の約 70 %であった。全血の凝固開始時間は、赤血球による第IX因子の活性化反応と、第IX因子が活性化した後の血球膜表面での凝固反応の速度に支配されることがわかった。
(3) 血液凝固に及ぼす流れの影響
赤血球によるIX因子の活性化と血液凝固に及ぼす血液の流動について、いくつかの方法により解析を行った。血流の停滞は、凝固反応を著しく促進することが明らかとなった。
(4) 各種動物の血液凝固反応の解析
赤血球による第IX因子の活性化がトリガーとなって血液凝固が起こるかどうかを種々の動物で調べることは、動物を用いてのモデル実験や人工心臓等の抗血栓性を評価する上で重要である。第IX因子活性化酵素は、動物種によっては存在しないことがわかった。
(5) 血流停滞下での内皮細胞の抗血栓性機能[3]
血流停滞時に内皮細胞が損傷し、それによって凝固反応が起こるかどうかをハイブリッド血管モデルを構築して調べた。血流が停滞しただけでは内皮細胞の損傷は起こらず、血流停滞時の血栓形成は、赤血球による第IX因子の活性化が関与していることが示唆さた。

A triggering mechanism
図1 A triggering mechanism of thrombus formation(Activation of factor IX by an enzyme on erythrocyteMembrane) 図2 Thrombus formed at stasis(fibrin network) 図1 Antithrombogenicity of endothelial cellsexposed to blood at stasis.
図1 A triggering mechanism of thrombus formation
(Activation of factor IX by an enzyme on erythrocyte
Membrane)
図2 Thrombus formed at stasis
(fibrin network)
図1 Antithrombogenicity of endothelial cells
exposed to blood at stasis. (a) endothelial cells
(b) platelets adherent to endothelial cells

Coagulation time and enzymatic activity of erythrocytes
図4
図4

Risk factors for venous thrombosis
図5 Stasis 図6 Age
図5 Stasis 図6 Age

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参考文献

[1] H. Iwata and M.Kaibara: Blood Coagul. Fibrinoly., 13:489, 2002.
[2] H. Iwata, M. Kaibara, N.Dohmae, K. Takio, R. Himeno and S. Kawakami: to bepublished.
[3] M. Kaibara, T. Yotoriyama and R. Himeno: J. Jpn. Soc. Biorheology, in press.

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