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理研外研究員(共同研究員):北脇 知己 ダウンロードへ 論文リスト>>

研究の概要

はじめに

 心血管系解析を行うための生体力学シミュレーションモデルとして、これまでに種々の数値計算モデルが構築されている[1]。なかでも血管軸に沿って流れ状態を表現する1次元分布定数モデルは、従来から生体現象の定性的な理解に役立っている[2],[3],[4]
1次元モデルを用いた生体力学シミュレーションの有用性は、近年になって再認識されている。例えば、血流の定量的な解析が可能なことを利用して血管バイパス手術の術前検討に用いられたり[5]、局所的な流れ場を計算する3次元モデル計算と全身血管系の1次元モデルを組み合わせたモデル構築の必要性が指摘されたり[6]している。なぜならば、今日のコンピュータの能力を持ってしても、全身の循環器系3次元シミュレーションモデルを構築することはほぼ不可能なため、対象領域のみを局所的な3次元モデルで記述した上で、全身の挙動については1次元モデルで記述することが現実的なモデルとなるからである。こうした解析においては、これまでの1次元モデルでは求められなかった、定量的で近似誤差の少ない高精度な1次元モデルが求められている。
そこで、本プロジェクトでは「心血管系1次元数値シミュレーションモデルの高精度化」として、3つの観点から高精度化したモデルを構築した。

研究概要

 1次元モデルを高精度化するにあたり、考慮すべき項目の主要なものに下記の5つがある。

(1) 血管構造(テーパ・分岐など)
(2) 流れの非定常性(流体粘性)
(3) 血管壁の動き(血管の粘弾性)
(4) 血液の非ニュートン性
(5) 境界条件

これらの項目から、生体力学シミュレーションを行う上で誤差に与える影響力の大きいものとして、分岐角の影響、非定常性粘性の影響、血管壁の粘弾性の影響に着目し、それぞれ新しいモデルを構築した。
(1)分岐角の影響
血管分岐部の半径比率と分岐角度に着目し、2軸の運動量保存則を構築することで新しい分岐部モデルを構築した(→ダウンロードページ(1),(2))、(→論文リスト(2))。
(2)非定常性粘性の影響
弾性管内を非定常的に振動する流れの粘性抵抗モデルを粘弾性モデルに拡張し、高速計算技法とともに1次元モデルに取り込み、その影響を考察した(→論文リスト(3),(4))。
(3)血管壁の粘弾性の影響
一般化粘弾性モデルから導いた管法則とその高速計算法を新たに提案し、数値計算結果を実験結果と比較することで各々の数値モデルの近似誤差を評価し、提案した手法の有効性を示した(→論文リスト(5),(6))。
以上の結果、構築した新しいモデルが高精度であり、生体シミュレーションに用いることが可能であることを示すことができた(→論文リスト(7))。

今後

 その後、構築したモデルを応用した全身の生体循環器系シミュレーションモデルを構築しており(→論文リスト(8),(9))、生体内現象の解明に向けての今後の成果が期待されている。また今後の発展として、3次元モデルとの結合に向けた研究も進めていく予定である。

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参考文献

[1] 日本機械学会編, 生体力学, (1991), 158, オーム社.
[2] Snyder, M. F., Rideout, V. C. and Hillestad, R. J., Computer modeling of the human systemic arterial tree, J. Biomechanics, 1(1968), 341-53.
[3] Avolio A. P., Multi-branched model of the human arterial system, Medical and Biological Engineering and Computing, 18-6 (1980), 709-18.
[4] Schaaf, B. W., Abbrecht, P.H., Digital computer simulation of human systemic arterial pulse wave transmission: a nonlinear model, J. Biomechanics, 5 (1972), 345-364.
[5] Wan, J., Steele, B., Spicer, S. A., Strohband, S., Feijoo, G. R., Hughes, T. J.R., and Taylor, C. A., A One-Dimensional Finite Element Method For Simulation-Based Medical Planning For Cardiovascular Disease, Computer Methods in Biomechanics and Biomedical Engineering, 5(3) (2002), 195-206.
[6] Kamm, R. D., Shim, E-B., Shirai, A., Bathe, M., Younis, H., Kaazaempur-Mofrad, M. R., and Hwang, W., Multi-scale simulation in biological systems, Proceedings of the First Internation Symposium on Advanced Fluid Information, (2001), 121-124.

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