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理研外研究員(共同研究員):望月 義幸 ダウンロードへ 論文リスト>>
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研究の概要

スポーツにおける生体力学シミュレーション研究

 本研究は、人間の身体的機能の数理モデル化手法と、コンピュータによるスポーツ動作の最適化シミュレーション手法、及び最適化を応用したシミュレーション手法により、スポーツ動作の研究における新たな科学的研究手法の確立を目標として行ったもので、投球動作、遠投動作(図1、図2)、バッティング動作(図3、図4)を具体的な研究対象とした。

 投球動作に関しては、滑らかな投球動作について詳細に調べ、1次、2次の関節トルク関数の2乗総和の項が、トルクの意味だけでなく、空間軌道の意味でも動作の滑らかさを実現する上で重要なことを示した。
また、上肢の質量と形状変化に対する影響、ボールの質量と形状変化についての動力学解析シミュレーション実験を行った。
上肢の質量と形状変化に関する実験では、筋力トレーニングを行って筋肉を増強することで投球速度を上げるためには、投球動作の改善を同時に行うことが重要であり、また、筋力トレーニングによる筋肉の増強は投球動作を改善するためのきっかけとなる可能性があることを明らかにした。他種目ボールを使ったボール質量と形状変化の実験では、手先軌道のループ部に特徴が現れ、ボールの種類によって投球動作が2つのグループに分類出来ることを示した。
これにより、投球動作の練習を他種目のボールで行うときの注意点を明確にできた。
図1
図1

図2
図2
 遠投動作に関しては、投擲角度の変化が与える影響解析から、投擲角度が大きくなると、「リリースポイントが早くなる」、「肩関節のトルクが手先軌道の描くループの始まりでは上肢を後下方向へ移動するように働き、ループ部の最下点からは急速に前方へ移動するように働く」等といった、動力学と運動学両面からの遠投動作のメカニズムを明らかにした。
また、遠投動作を具体例として習熟目的が複数あるときに、それらの重要度を習熟過程で動的に変えたときに収束動作が如何なるものになるのかを調べ、スポーツ動作の習得練習に関して新たな知見を得た。

これによると、複数の練習目的に対して、重視する練習目的を動的に変化させながら練習すると、重視する項目の順序に依存して習熟する動作は互いに異なるものとなり、実験では円盤投げのようなサイドハンドスタイルから、初期動作と同じオーバーハンドスタイル、それらの中間のクウォーターハンドスタイルという、既存に知られている3種類の遠投動作に収束するという興味深い結果を得た。
従って、複数の習熟目的を持つ練習においては、重視する練習目的の順序も重要であり、また現実の選手の微妙に異なる動作の違いは、身体的な要因ばかりでなく、練習順序が関係している可能性があることを示した。

 バッティング動作に関しては、バットと上肢間の相互作用としての「屈曲-伸展-屈曲」現象に着目し、数理モデルの構築、シミュレーション実験によるの動力学解析と最適化を行った。 その結果、この現象には2つの慣性力である遠心力とコリオリ力が重要な役割を担い、重力の影響は大きくないことを示した。また、最適化シミュレーションから手関節に負担を掛けないバッテイング動作の存在を示すと共に、「屈曲-伸展-屈曲」現象に着目した動作メカニズムを明らかにした。
図3
図3

図4
図4

図5
図5
 以上のような具体的な解析を通して、本研究手法が、スポーツ動作の研究において実証的な研究手法を補完する、非常に有効な手法であることを示せた。また、本研究手法をスポーツ動作の生成技術と見た場合には、スポーツ動作の可視化技術と組み合わせることにより(図5)、娯楽、教育産業へも大きく貢献するものと考える。

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