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理研外研究員(共同研究員):坪田 健一 ダウンロードへ 論文リスト>>
東北大学大学院工学研究科バイオロボティクス専攻
仙台市青葉区荒巻字青葉01

研究の概要

 生体骨の構造は、力学環境の変動に応じて、リモデリングにより機能的に適応変化する。
このメカニズムを明らかにするため、これまでに、細胞レベルから組織レベルに至るリモデリング現象に対して、それぞれの階層において個別に検討が進められてきた。しかしながら、各階層間の連成効果については、未知な点が多い。そこで、本研究では、複雑な骨梁構造を有する海綿骨に対して、計算力学的手法を用い、構造要素レベルのリモデリングから全体構造の適応変化に至るメカニズムについて検討を行った。

 まず、骨梁レベルの力学刺激と骨形態変化とを直接関連付けたリモデリング則に基づき、骨梁リモデリングの大規模有限要素シミュレーションモデルを提案した。
次に、大腿骨近位部のリモデリングシミュレーションを行った結果、骨梁レベルの微視的な力学刺激の一様化により、巨視的な海綿骨レベルの力学状態に応じた骨梁構造変化が得られた。さらに、本シミュレーションモデルを、実際の三次元骨梁構造を精密に表現可能なデジタルイメージモデルに適用した(図1)。その結果、得られた骨梁構造の形態特徴量変化は、報告されている実験結果と良く一致した。一方、微小三点曲げ試験により、骨梁個々の力学特性は、その力学環境に大きな影響を受けない可能性が示唆された。
以上より、骨梁の形態の変化による、ミクロからマクロに至る海綿骨の構造適応過程が明らかとなった。
図1 Image-based model of cancellous bone in canine distal femur constructed from X-ray micro CT image data.
図1 Image-based model of cancellous bone in canine distal femur constructed from X-ray
micro CT image data.

図2 Trabecular structural changes adjacent to the bone-screw interface: (a) Compressive loading case (Ic); (b) Shear loading case (Is).
図2 Trabecular structural changes adjacent to the bone-screw interface: (a) Compressive
loading case (Ic); (b) Shear loading case (Is).
 さらに、このシミュレーション手法の医用工学分野への応用として、固定用スクリュー近傍を想定した海綿骨の骨梁リモデリングシミュレーションを行った(図2)。
その結果、荷重環境の違いに応じて、特徴的な骨梁の形成および欠落が、ネジ山において生じることが明らかとなった。さらに、本シミュレーションを人工股関節ステムの形状設計問題に用いた場合、骨リモデリングを考慮したステム形状設計が可能になることが示唆された。
以上より、本シミュレーション手法が、骨に装着する装具の評価および設計において、有用であることが示された。

 以上の手法は、 CT、MRI等で計測される医用画像データと組み合わせて使用する事が可能であり、患者の個体に応じた形状の違い等に柔軟に対応が可能である(図3)。
したがって、本研究で示した手法は、骨インプラントの形状設計問題および一般の生体組織の計算力学モデル構築において、実用的な手法を提供するものと期待される。
図3 Image-based finite element analysis of human proximal using medical CT image combined with large-scale computation.
図3 Image-based finite element analysis of human proximal using medical CT image
combined with large-scale computation.

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