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協力研究員(理研所属):山村 直人 ダウンロードへ 論文リスト>>

研究の概要

カテーテルシミュレータの開発

1.概要
 近年、脳動脈瘤の治療では低侵襲治療として血管内手術(カテーテル手術)が注目されている。カテーテル治療では、いかにカテーテルを安全に脳動脈瘤まで誘導するかという問題があるが、その誘導技術は術者の経験に頼るところが大きい。
 本研究ではコンピュータ上に仮想的な脳動脈瘤の手術環境を構築し、患者一人一人の血管画像を用いて、術者がカテーテルの誘導技術をトレーニングするためのリアルタイムシミュレーションシステム(カテーテルシミュレータ)の開発を行った。
 本研究ではその第1段階として、ガイドワイヤ(血管の分岐等でカテーテル本体を目的の方向に進行させるための誘導指標として、血管内を先行する金属ワイヤー(図1))に着目し、血管内のガイドワイヤの曲げおよびねじり変形を考慮した力学モデルを構築し、それをコンピュータ上で再現するためのガイドワイヤ誘導シミュレーションソフトウェアを開発した。
図1 カテーテル先端のガイドワイヤ
図1 カテーテル先端のガイドワイヤ

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図2 入力デバイス
図2 入力デバイス
図3 カテーテルシミュレータ
図3 カテーテルシミュレータ
2. カテーテルシミュレータ
 
カテーテルシミュレータはリニアエンコーダおよび回転エンコーダからなる入力デバイス(図2)とパーソナル・コンピュータ(以下、PC)からなるシステムである(図3)。本研究で開発したシミュレーションソフトウェアは、入力デバイスより検出された変位および回転量から、PC上に表示された血管画像内のガイドワイヤを力学計算の下に進行および変形させ、それを表示するソフトウェアである。
 PC上から血管画像であるボリュームデータを読み込み、ガイドワイヤの先端形状、初期位置、材料特性の設定の後(図4(a))、入力デバイスあるいはマウスを用いてガイドワイヤを進行させる(図4(b))。血管画像はMRIなどから得られる輝度値のデータを用いたボクセルデータである(TERA RECON社のVolumePro VOXELフォーマットおよび理化学研究所4次元可視化ボリュームフォーマット)。血管壁は有限要素メッシュ等を張ることなく、輝度値の等値面により表現しており、ガイドワイヤの血管壁への穿破は輝度値の大きさにより判定する(図4(c))。

図4 ガイドワイヤのシミュレーション(a) 図4 ガイドワイヤのシミュレーション(b) 図4 ガイドワイヤのシミュレーション(c)
図4 ガイドワイヤのシミュレーション

3. ガイドワイヤの力学モデル
→ダウンロードページ(1)
 ガイドワイヤは棒部材とそれを結合する回転ばねにより離散化し、その準静的な変形のみを考慮して定式を行った。ただし、血流の影響は考えないものとした。ポテンシャルエネルギとしてガイドワイヤの曲げおよびねじり変形のみを考慮し、停留ポテンシャルエネルギの原理に基づき定式化した。血管壁は任意の輝度値の等値面により表現する手法を採用した。血管壁とガイドワイヤの接触は輝度値の大きさにより判定し、血管壁の法線ベクトルは輝度値の勾配から算出する。
 Y字型血管モデルを用いたガイドワイヤの計算例を図5に示す。血管壁と接触したガイドワイヤ節点は血管壁に沿って進行することが確認できる。
図5 Y字型血管モデルを用いたガイドワイヤの計算例

図5 Y字型血管モデルを用いたガイドワイヤの計算例
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4. まとめ

 カテーテルシミュレータの特徴は、血管表現のために有限要素メッシュ等を張る必要がないため、MRI等から得られた患者のデータを用いて短時間にシミュレータにかける(すなわち、カテーテル治療のための術者のトレーニングをする)ことができるということである。これは患者に応じた適正な治療に寄与し、効率的、効果的な術者のトレーニング環境を提供するものと考える。
 今後、カテーテル本体の変形や血流との連成解析、また、血管壁との接触力を入力デバイスにフィードバックしたヴァーチャルリアリティ手術環境の構築などへの進展が期待される。

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